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まだ頭に血液が回らないはっきりとしない意識。
頭の中になにか重いものを詰められたかのような感覚。
とりあえず手探りで枕元の煙草を手繰り寄せる。
ライターが見つからない。
部屋をきょろきょろと見渡すと目当てのものは炬燵の上に鎮座していた。
布団から出るのは億劫ではあったが、ニコチンの常習性には抗えなかった。
もそもそと炬燵まで這いつくばりライターを手に取る。
煙草を咥え、火をつける。
とりあえず一息。
この間約五分ほど。
寝起きの動きの遅さには定評がある。そしてここまでの動きはほぼ無意識の流れである。
煙草の灰を灰皿に落としようやく意識が覚醒を始めた。
殺風景な六畳の和室。真ん中に炬燵を置いてある他はテレビと本棚だけ。
煙草をふかしながら色々な考えがまとまってくる。
例えば昨日の出来事。
『もう学にはついていけない』という月並みの言葉で別れを切り出された。
原因は簡単だ。自分で言うのもなんだが、こんな限度を知らない物ぐさな男と付き合うならばそれこそ海の如く広く深い器を持って付き合わなければ半年も持たない。
ましてや合コンで多少意気投合をして、『まあこの娘でもいっか』という向こうにしてみれば最低の部類の理由で付き合い始めたわけである。部屋を掃除しろ、週に一回ぐらいは会って欲しい、隣街に出来た大型ショッピングセンターに行きたい、エトセトラ、そんな希望はすべて面倒くさいの一言で突っぱね続けてきたわけだ。
しかし手に入れた身体の関係は、男としてはやはり惜しいもの。
『分かった、じゃあ最後に一回だけしよう』
その言葉がいけなかった。豪快に平手を振りぬかれて無様にもよろけて尻餅をついてしまった。顔を上げたときにはすでに玄関が開いていたという流れだ。
ぶたれた左頬を擦りながら煙草の火を消した。別に痛いわけではないが、自分の甲斐性のなさに少し心が痛むのも事実である。
窓を開けてもう高くなった太陽を見上げた。
肌寒い冬の空気が一気に室内を満たすように入り込んでくる。
「さぶっ」
そう言いながら辺りに広がる田圃の景色を眺めていた。
一人暮らしの多い田舎の大学生らしい怠惰な生活。
こんなモラトリアムを与えられるとニートになってしまうのも無理はない。
とりあえず授業は三時限目から出ることにした。